ブログトップ

column

unocolumn.exblog.jp

8/12 建築家 白井晟一の言葉

「初心忘るべからずというところかな。能藝のことは知らないが、建築の修行にも世阿弥の稽古精神はそのまま遵奉(じゅんぼう)してよいと思う。不断の、そして老後もなお初心を忘れるようでは自分を全う出来ない。人間は器用な動物だけれど、こういう単純な原理に縛られている。そういうことでは建築家も職人も同じはずと思うんだが、建築家の場合は、頭の中だけで終わってしまうことが多いのではないかと思う。比較的実力ありと思われる建築家に、かえってそういうのが多い。形の新奇をねらうのはよいが、ディテールが不誠実なのはそういう心がけが欠けているんだ。いい建物は、たしかな構造とひとをひき上げられる形を持っていると同時に、充実した空間は誠実なディテールの集積だと思う。手が込んでいるとか、上質な資材を磨き立てることとは違うよ。歴史を作ろうという思い上がりよりは、時間に堪えられるとか、丈夫で長持ちなものをつくることを後ろ向きだと思う心得違いのものもきっといるね。そういうこと(時間に堪えられるとか、丈夫で長持ちなもの)が建築家の良心だし、正義感というのも、この辺の人間的な反省から自然に湧いてくる実感にならぬといけない。けれどこういった建築の質と建築家の倫理とはマスコミの素材とはならない。」
[PR]
by unocolumn | 2009-08-12 11:25 | 本・言葉
<< 8/13 柳宗理 エッセイ 建築の詩 >>